銀価格の状況
世界的な金の高騰が続く中、その影に隠れるようにひっそりとただ確実に価格をあげている貴金属が銀である。金の価格上昇があまりに激しく、見た目通り派手なのに比べどこか渋い銀は、文字通りいぶし銀の風格がある。また金の需要は貯蓄としての現物資産か装飾品目的がほとんどだが、銀は生活に役立つ工業用需要が6割近くを占め・太陽光パネル・電気、電子機器半導体の部品などに使われている。
下記図グラフでも分かる通り、コロナショック下で企業の生産が止まり、半導体生産工場も稼働率が大きく下がった。このため工業需要が落ち、3月の時点では大きく価格を落としている。
ではなぜ今銀の価格は上げてきたのか?
*ここ一年間の銀価格推移2019年6月から2020年7月末まで
銀価格上昇の理由:金と比較して
①もともと工業用でニーズが高い為+銀の枯渇の可能性:コロナの感染者が増大がある程度落ち着き経済活動が戻り工業用銀のニーズが戻ってくると見通しがでたのが大きな要因です。また銀の地球に残されている埋蔵量は約40万トン(現在までに、すでに100万トン採掘してます)。工業用として有用な銀をこのままのペースで消費していくと2040年頃には枯渇する可能性があります。銀は金より10倍 地球上に存在しますが、工業用に消費されてしまうため(もちろんリサイクルされるが回収率は100%ではなくロスが発生する)ある意味、消費されず投資・装飾品目的で使われる金より、人類にとっては必要性は高いかもしれません。
②ESG投資の太陽光パネルの材料として:コロナ禍がきっかけで、社会に急速にESGという考え方が浸透してきていることにより、太陽光発電が広まり、材料としての銀の価格も高騰。また米大統領選で野党・民主党の候補指名を固めたバイデン前副大統領は、環境・インフラ投資に2兆ドルの環境政策を発表。トランプ大統領の再選が厳しい状況の中、この環境政策が実現すればアメリカの太陽光発電は急速に普及し銀需要も伸びることが予想される。
③金銀比価(ゴールド・シルバー・レシオ)の異常値:コロナショックによる金高騰により、相対的に銀が割安となった。
コロナショックで金の高騰が続く中、銀価格は下がったため、金と銀との価格差を示すこの金銀比価指標が史上最高値に(2020年3月17日)。このトレンドはすでに昨年12月から問題視されていたが、コロナによる影響でさらにブーストされる結果に。
過去を振り返っても金が上がると後をおって銀も値上がりする傾向にある
- 過去50年間のゴールドシルバーレシオは約57倍
- 過去10年間のゴールドシルバーレシオは約66倍
- 過去1年間のゴールドシルバーレシオは約80倍
- 1985年以降の平均は約46倍
- 2020年3月には史上最高値の123.78に
銀価格の今後
現在のような景気後退期には銀は売られやすく金が買われても付いていけない(出遅れる)。それが好景気に入りインフレが顕著になると銀は一気に上昇する.
銀行大手ABNアムロの発表によれば2020年末までに20ドルを超えると予想。
銀価格は金以上に様々なファクターで揺れ動くため、注意が必要である。経済状況が回復に向かい、工業需要が元に戻れば金や他の貴金属にはないESGや枯渇問題の上昇理由にプラスされ銀は金以上に需要が伸びる可能性もある
まとめ
- 金価格の上昇に伴い銀価格も上昇
- 銀価格が上昇する要因は3つある(枯渇問題、金銀比価、ESG)
- 20ドルを目指して動く可能性があるが、金以上に影響するファクターが盛り沢山
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